月に一度、キーワードを元に最新の産業用ドローンのトレンドを追いかけていく本企画。
第14回は「エンジン+モーター=ハイブリッドドローン!」と題して、最新のドローンの動力源について紹介していきたいと思います。
Contents
産業用ドローンの課題
飛行時間の課題
現在、世界各国で飛行しているドローンは、そのほとんどがリポバッテリーを動力源とした電動機となっています。
リポバッテリーとブラシレスモーターと組み合わせで、一昔前では考えられないようなパワーを発揮し、さまざまな用途でドローンが活躍できるようになってきました。
しかし、パワーが上がれば上がるほど、効率面が悪くなり、飛行時間が課題として出てくるようになってきました。
従来のように、ちょっとした空撮ならばまだしも、さまざまなシーンでドローンが使われるようになると、重いものを持ち上げると同時に、なるべく長い時間飛行する必要が出てきたのです。
例えば、撮影用の本格的な一眼レフカメラや専用のカメラを使った測量や、農薬散布の農薬、物資の輸送など重いものを持ち上げながら、さらに長時間の飛行が求められるシーンが続出しており、ドローンの飛行時間は、ドローンが産業シーンの中でいかに活躍できるかのひとつの障壁と考えられるようになりました。
そんな時、注目されたのがエンジンです。
エンジンに着目
燃費の良いエンジンは、従来よりラジコン模型などでも用いられており、ドローンにも転用できるのはないかと考えられてきました。
エンジン機の飛行時間の長さは、リポバッテリーの比ではなく、まさに課題を解決する上で非常に有効だと考えられました。
しかし、そんなエンジンにも大きな課題がありました。
ひとつは振動です。
エンジンですので、クランクケースの中で爆発して、その爆発がピストンからメインシャフトを通じてさまざまな運動へと変化していきます。
この際の爆発はドローンにとっては大きな振動となります。
振動はドローンのフライトコントローラーに影響を与えるだけでなく、電子機器の塊であるドローンにとって、さまざまな影響が考えられます。
また、モーターのように数機搭載するとなると、そのすべてを同期させなくてはなりません。
エンジンの調整はモーターとESCの比ではなく、慣れるまでは非常に難しいものとなります。
そんな課題を解決する方法が世界中で探られるようになりました。
エンジン+モーターという発想
そこで考えられたのが、エンジンで発電しモーターを回転させるハイブリッドドローンです。
今年の国際ドローン展でもブースでハイブリッドドローンを展示していた石川エナジーリサーチ製の機体「ハイブリッドフライヤー」を参考に見ていくと、機体中央には350ccのガソリンエンジンを搭載。
振動の課題を解決
このエンジンは無振動の水平対向エンジンとなっており、ここでまず最初の課題であったエンジンの振動というものが解決することができます。
これによってGPS等の精密機器が誤作動を起こすことなく、正確で安全な飛行ができるようになります。
ガソリンエンジンのパワーでモーターを回転
次に、そのガソリンエンジンで発電した電力でモーターを回します。
この機体にはガソリンエンジンとは別にバッテリーも搭載されているようですが、このバッテリーはあくまで補助的なものにすぎず、急にパワーがいるような場面(例えば風にアオられてしまった際など)で使われはするが、モーターを回転させるパワーは、そのほとんどがガソリンエンジンから生み出されるようになります。
「ハイブリッドフライヤー」の出力は11kW/6,800rpmを誇り、6つのモーターをしっかりと回し切るパワーを生み出します。
長時間飛行を可能に
これらの要素を踏まえると、「ハイブリッドフライヤー」の飛行時間は12kgまでのフルロードで60分の飛行が可能であり、飛行時間だけに注力した仕様となると、180分以上の長時間飛行が可能とのことです。
このように燃費の良いガソリンエンジンを動力源とし、パワーソースは振動がなく、セッティングも容易なモーターを使ってプロペラを回転させるというのは非常に理にかなっているのではないでしょうか。
それぞれの得意な部分を引き出し、組み合わせて新しい価値を生み出す。
それによりドローンの弱点をカバーでき、大規模農場向けの農薬散布や長時間の飛行が必要となる測量やインフラ検査、そして物流に至るまで、ハイブリッドドローンの長時間飛行は喉から手が出るほど欲しい性能のはずです。
まとめ
ドローンの飛行時間については、リポバッテリーの進化を待つという考え方もあるでしょう。
現在でも次々と新しいリポバッテリーが登場し、高品質かつ安かろう悪かろうではなくしっかりと使えるリポバッテリーが安価で手に入るようになってきました。
しかし、根本的な部分での解決にはならず、テクノロジーの発達を待って飛行時間の延長を少しずつおこなっていくには時間がかかりすぎます。
そこで登場した今回のようなハイブリッドドローンような仕組みは、今後ドローンの活用がさまざまなシーンでおこなわれるようになるに従って、非常に重宝されることでしょう。
燃費の良さはそのまま効率性の良さにつながり、効率的かつ高い質を求められる産業用ドローンの世界にまさにマッチするものと思っています。
今後もハイブリッドドローンから目が離せなくなりそうですね。
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