昨今、ドローン業界だけでなく、土木の世界全般において「i-Construction(アイコンストラクション)」という単語がホットワードになっています。
いったい、なぜこの言葉が注目されているのか、そして「i-Construction」とはいったい何なのか、今回はこの「i-Construction」を掘り下げていきたいと思います。
Contents
i-Constructionとは
「i-Construction」は、国土交通省が平成27年12月に導入を発表した土木建設工事における一連の行程の中で、3次元データを活用した取り組みを指します。
建設現場における生産性の向上を目的としたもので、ICT技術の全面的な活用、企画の標準化、施工時期の平準化をおこない、生産性向上による企業の経営環境の改善と建設現場に携わる人の賃金向上による魅力的な建設現場への生まれ変わりを目指しています。
「i-Construction」では、建設工事における「測量」「設計・施工計画」「施工」「検査」を一連の行程としており、この行程を、3次元データを活用することで、特に土工やコンクリート工などで約50%の生産性向上を図るとしています。
i-Constructionとドローン
では、この「i-Construction」の中で、ドローンはどのように活用されるのでしょうか。
ポイントは前述した「3次元データ」になります。
従来、土木施工をおこなう際は、まず人の手で測量をおこない、書き起こした平面図、縦断図、横断図から設計図を作り施工土量を算出してきました。
これを「i-Construction」ではドローンを使って上空から短時間で3次元測量を実施し、そこで得た測量データを元に現況図と設計図を照らし合わせ切り土や盛り土量といった施工量を自動計算で算出します。
このようにして作成した3次元設計データを、今度はICT建機に入力することで、建機は自動で設計図通りに動きます。
施工後は再びドローンを飛ばして3次元測量による検索をおこないます。
ここでも従来の検査と比べて、出来形の書類等が要らなくなり、検査項目も少なくなったことで生産性の向上を図っています。
このように、「i-Construction」においてドローンはその基礎となる3次元データを取得するという、非常に重要な役割を担っているのです。
ドローン測量について
ドローン測量の具体的な内容
次に、「i-Construction」におけるドローン測量の具体的な中身について見ていきたいと思います。
ドローンを上空に飛ばして得ることができる「3次元点群データ」は、上空から撮影した際に得ることができる撮影エリアのXYZ軸の情報になります(それ以外にもRGBデータも取得できます)。
ドローンはGPSやグロナスといった人工衛星からの位置情報を得ながら飛行しています。
さらに、ドローン自体に気圧センサーが搭載されているので高度の情報も得ることが可能です。
これらの情報に、レーザー測距装置などを組み合わせることで正確な位置情報を取得することができます。
これらの位置情報は「点群」という名前の通り点の群れとなっており、このデータをソフトで加工すると、「i-Constructionとドローン」で紹介したように3次元の設計データを作ることができるようになります。
最近ではより正確な位置情報を計測するために、地上の基準局からの電波も受信して自己位置測位の精度を高めるRTK(リアルタイムキネマティック)という仕組みを搭載したドローンも登場しています。
この仕組では、GPSなどと比較して遥かに精度の高い自己位置測位を実現しており、cmクラスの測量が可能になっています。
ドローン測量のメリット
次にドローンを使った測量のメリットですが、まずはなんといっても作業の効率性でしょう。
人の手でひとつひとつおこなっていく従来の測量と異なり、上空からおこなうため作業時間だけでも大幅に縮小できます。
一例として、地上3Dレーザー測量で3日かかるところ、ドローンでは0.5日で終わってしまうと言われます。
また、人が近づきにくい場所でも上空から測量をおこなうことができるという、ドローンならではのメリットもあります。
他にも、従来の航空機を使った上空からの撮影は高高度からしかおこなえませんでしたが、ドローンなら低空での撮影が可能ですので、より精度と解像度の高い撮影をおこなうことができます。
このように多くのメリットがあるドローンによる測量ですが、上空から撮影するため木が多く生えている森などは地面が見えないため、上空から測量をおこなうことが難しい現状がありました。
しかし、最近ではドローン用のレーザースキャナーが開発され、レーザーを照射することで地形データを取得できるようになりました。
まだ高価なものですが、今後の「i-Construction」の盛り上がりを考えると、多くのメーカーが参入し、装置自体の価格は下がり、性能はどんどん上がってくることでしょう。
i-Constructionの今後
国土交通省では「i-Construction」の導入を積極的に推進しており、今後はほとんどの土木施工がICT施工に変わっていく予定です。
ICT施工が日本全国で実施されるということは、そのすべての施工でドローンによる3次元測量データが活用されることになります。
今後は機体も小型化され、さらに効率的で実用的な測量に特化した機体も開発されていくことが予想され、「i-Construction」はますます世の中に広まっていくことでドローンの活躍する領域もさらに広がっていくことでしょう。
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