ドローンがさまざまなビジネス領域で活躍するようになってくると、飛行する機体もそれに応じて多くなってくるわけで、機体同士の接触事故や、不明なドローンの侵入を懸念する声も多くあがってくるようになりました。
また、一般的な航空機と低空では同じ空を飛ぶことになるので、飛行機への影響などについても議論されるようになりました。
そこで出てきたのがUTM(Unmanned Aerial System Traffic Management)と呼ばれるものです。
これはドローンの世界でいう航空管制に当たるもので、ドローンを安全に、そして適切な飛行ルートで飛ばすために存在します。
現在、世界各国で研究開発されているUTMですが、概念としては1つだけでなく、そのレイヤーによってさまざまなUTMが開発されているのが実情です。
今回はそんなUTMをレイヤーごとにわけて紹介していきたいと思います。
Contents
空域管理者およびドローン操縦者向けのUTMシステム
機体そのものやアプリに搭載されているUTM
いわゆる「ジオフェンス」機能と呼ばれるもので、機体が空港や政府の建物などに近づかないようにプログラミングされている機能と、自分で飛行エリアを区切って、そこだけで飛行させる機能になります。
DJIなどの機体に搭載されている機能は前者で、最初から政府の建物や空港周辺には機体を入れることはできません。
一方、後者は自分で飛行エリアを限定するもので、例えば農薬散布などをおこなう時にこういった機能を使うことができれば、より効率的に、そして安全に散布が完了するのではないだろうか。
このレイヤーでは、自分の機体を他のドローンに知ってもらうというものではなく、あくまで機体が「余計なところに行かないようにする機能」であることもを覚えておいてもらえればいいでしょう。
これらの機体はDJIの機体や、3DRのSoloなどに搭載されています。
※DJIの機体をアプリで操作するGS Proの体験レポートはこちら
空域管理者とドローン操縦者の間をつなぐUTM
このレイヤーでは、機体とは別にシステムを介して限定された飛行エリアの中で、自分の存在を周囲に示したり、自分が管理している空域での飛行を許可するといったような飛行エリアの管理ができるUTMがある。
このシステムを介すことで、空域管理者は自分が管理する空域の安全を確認したり、外部からの飛行許可についても、オペレーターのプロフィールを確認したり、簡単にコミュニケーションを取ることができるようになります。
こうすることによって、より安全性を高めたドローンの運用ができることになるでしょう。
このレイヤーのUTMとしては楽天Airpmap社の「楽天Airmap」やベルギーのUniflyなどがあります。

楽天AirMapではドローンを操縦する人だけでなく、空域管理者にもサービスを提供し、両者がコミュニケーションを取ることができるプラットフォームとなっている。※画像は楽天AirMapのWebサイトより抜粋。
国レベルで開発が進むUTM
このレイヤーのUTMは、その国と国内の大手企業によって開発が進められている領域となっており、この開発は今後のドローン産業の運命を担っているものと言っても過言ではないでしょう。
このUTMの開発がもっとも進んでいるのがアメリカのNASAとなっており、日本でもJUTMという団体が発足して、自分たちの技術を世界全体で使用してもらえるようにさまざまな活動をおこなっています。
このレイヤーのUTMは、正直まだ実現しておらず、これから研究や開発が進んでいくことでしょうが、あらゆるドローンがこのレイヤーのUTMに登録されていくとなると、まさに実機の航空管制と同じような仕組みとなます。
ドローン飛行までの申請の簡略化や機体同士の衝突防止などの安全性が飛躍的に伸びることで、現在とは比べ物にならないほどの多くのドローンが安心して飛ぶことができる世界が実現するのではないでしょうか。
おわりに
ドローン版の航空管制に近いUTMの世界。
ひとくちにUTMと言ってもそのレイヤーによって目的や方法が大きく異るものですが、どのレイヤーにおけるUTMでも機体を安全に飛ばす、という目的は同じものとなっています。
自動航行による運送などを実現しようとするとどうしても必要なUTM。
今後もこのキーワードから目が離せません。
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